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4-34 クリスマス・イブのディナーの席で 2

ผู้เขียน: 結城 芙由奈
last update ปรับปรุงล่าสุด: 2025-05-16 08:57:35

「で、でも……いきなり長野へ行こうと言われても…」

朱莉が困った顔をする。

「え? 何か問題でもあるのか?」

翔が不思議そうな顔をする。

「翔さん。明日香さんをお迎えに行くのですよね? 明日香さんは翔さんに取って大切な女性じゃないですか。それなのに私が付いて行くのはさすがにどうでしょうか? 恋人を迎えに行くのに、別の女性が付いて行くのは流石にあり得ないと思うんです。折角のお誘いなのに申し訳ありませんが、明日香さんのお迎えはどうか翔さん、お1人で行っていただけますか? 私は東京で翔さんが明日香さんを連れ帰って来るのを待っていますから」

「朱莉さん……」

思いつめた表情で語る朱莉の顔を、翔は呆然と見ていた。その言葉から、朱莉は翔が明日香とやり直すことを切に願っているのだと知り、同時に少し落胆する気持ちが自分の中に湧いて出て来た事に戸惑いを感じていた。

(ひょっとすると俺は明日香よりも朱莉さんに惹かれ初めているのか……? いや、きっと明日香が俺の元から去ってしまって少しナーバスになっているだけなのかもしれない。ならやはり自分の気持ちをはっきりさせる為にも明日香を迎えに行くべきなのかもしれない……)

「そうだったね。考えてみれば確かに朱莉さんの言う通りかもしれない。よし、今度の週末明日香を迎えに行って来るよ」

「はい。きっと明日香さんは翔さんが直接迎えに行けば、とても驚くと思いますよ。喜んで帰ってくれるかもしれません」

「だといいけどね……よし。食事も済んだし、そろそろ帰ろうか?」

「はい、そうですね」

そして翔と朱莉は蓮を連れて、店を後にした――

****

 億ションの朱莉の部屋の前で別れ際に翔が言った。

「朱莉さん」

「はい、何でしょうか?」

「これからは何か困った事があった場合は直ぐに相談してくれるかな? 力になりたいんだ。何故なら……」

翔はそこで言葉を切った。

「どうかしましたか?」

朱莉が首を傾げる姿を見て、翔は思わず朱莉に触れようと手を伸ばしかけ……そこで動きを止めた。

「朱莉さんは今は蓮の母親だからね」

「確かに言われてみればその通りですね。悩みがあると育児に支障をきたしてしまうかもしれないですし……。分かりました。今後は翔さんに相談することにします」

「ああ。是非そうしてくれ。それじゃお休み」

「はい、お休みなさい」

そして朱莉は翔が階段を下りていくのを
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